なぜ肖像画の下に別の肖像画が?
村上市指定文化財「内藤家歴代当主肖像画」
「内藤家歴代当主肖像画」は、村上城主内藤家の家祖信成から第10代当主信敦までの歴代当主を描いた10枚の肖像画です。内藤家を祀る当社の御神宝として秘匿されてきましたが、その重要性から、令和2年7月に初めて一般公開しました。絵画として優品で、かつ10点もの肖像画が長期間にわたり離散せず現存している例は非常に珍しいものとして、村上市文化財に指定されました。
歴代肖像画のうち8代~10代の3枚は、過去に絵が剥がされたと伝えられ、現在では白紙の状態で保管されていましたが、8代、9代の2枚の白紙を剥がしたところ、白紙の下から新たな肖像画が発見され大きな話題となりました(2020.07.20 新潟経済新聞)。
令和2年に残るすべての絵について、国の専門機関である独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所が光学調査を実施したところ、10代の白紙の下と7代の絵の下にもさらに肖像画が隠されていることが判明しました。
本稿では、その発見までの経緯をご紹介します。
藤基神社御神宝 内藤家歴代当主肖像画について
藤基神社には江戸時代に描かれた村上藩主内藤家歴代当主の肖像画全10枚が門外不出の秘宝として伝えられてきましたが、そのうち3枚は絵が剥がされ枠組みだけが残された白紙の状態、1枚は半分破かれた状態でした。肖像画は御神宝ということもあり、その存在は代々の宮司のみに伝えられ、防犯上の理由からもその存在を公表してきませんでした。
肖像画の新発見について
令和2年に行われた『村上藩主内藤家 立藩300周年記念事業』の一環として肖像画の初公開を決め、その準備の中で、白紙の肖像画の下にさらに絵があるのではないかと疑問が生じ、表装の専門家の手により白紙を剥がしたところ、隠された肖像画を発見しました。
専門機関による光学調査について
白紙であった3枚の肖像画のうち2枚を剥がしたところ、それぞれから肖像画が発見されたことから、残る1枚にも同様に肖像画が隠されていることを確信し、残る1枚は白紙を剥がさず現状を保存することとしました。
また、剥がした白紙にはその上に張ってあったであろう肖像画の輪郭に沿った日焼け跡が残っていたことから、残るすべての絵も同様に、現在の絵の下にさらに肖像画が隠されている可能性があります。そこで、国の(※現在は独立行政法人として運営)専門機関である東京文化財研究所様に光学調査を実施していただいたところ、残る白紙の下と現存する肖像画の一枚の下に確実に絵が隠されていることが発見されました。
その光学調査の様子はこちらをご覧ください。
肖像画の今後の取扱い
村上藩主内藤家の歴代肖像画は、神社のみならず地域全体の宝であり、絵画として優品である大名の肖像画が長期間にわたり離散せず10点もの現存している例は国内でも非常に珍しいものであり日本全体の宝であります。
これまでは防犯上の理由からも神社の御神宝として肖像画の存在は公表しておりませんでしたが、今後は然るべき場所で適切に保存しつつ、皆様に広くご覧いただくことが肖像画にとっても最良であると考え、今後は村上市郷土資料館に寄託することとしました。また、令和3年には村上市指定文化財に指定され、今後も行政の力を借りて適切に保護していきます。
神社では肖像画の形代(複製)をご覧いただくことができます。現物の展示時期については、村上市郷土資料館にお問い合わせください。